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女優:戸田恵梨香

女優:戸田恵梨香

『スカーレット』はいい意味で泥臭い。
それを愛おしく思ってもらえたら

9月30日からスタートした、NHK連続テレビ小説『スカーレット』でヒロインの川原喜美子を演じる、女優の戸田恵梨香さん。戦後まもなく大阪から滋賀・信楽に移り住み、長女として一家を支え、やがて男性ばかりの陶芸の世界で女性陶芸家の草分けとなる喜美子。がむしゃらな強さと天性の明るさを持つ彼女の姿は、時代を超えて今に生きる私たちに勇気と希望を与えてくれます。

女優:戸田恵梨香

「朝ドラのヒロインをやるってこういうことか!」身が引き締まったという戸田恵梨香

戸田さんは女優として、すでに多くのドラマや映画でキャリアを積んでらっしゃいますが、今回初めて〝朝ドラ〟のヒロインを演じるに当たり、どのような思いで臨まれたのでしょう?
通常のドラマだとワンクール3カ月ぐらいで撮影するところを、朝ドラは11カ月かけて、ひとりの女性の人生を演じていくので、めったにできない経験ですし、それを経たときに自分がどう変化しているのか。私自身、知りたくてやらせていただいたところがあるんですが、ロケで信楽を訪れたときに、陶工の方や地元の方々とお会いして、いろんなお話をきいて・・・。私は信楽のみなさんの心を背負ってるんだな、朝ドラのヒロインをやるってこういうことか! と身が引き締まりました。
今回演じられる喜美子は、戦後の貧しい時代を明るく生き、女性陶芸家の草分けとなるエネルギッシュな女性です。戸田さん自身との共通点はありますか?
喜美子は深い愛情とパワーを持っていて、それを周りの人にも与えられる女性。役を演じるときに自分との共通点を考えることはあまりないんですが、そこは私も見習いたいなと思いました。あと、なにか答えが見つかるまでは徹底的に考える、仕事でも対人関係でも決して妥協しない懸命さも喜美子の魅力で、そこは自分も少し似たところがあるかもしれません。
女優:戸田恵梨香

3カ月間、陶芸の猛特訓を受け、撮影に臨んだ ©NHK

喜美子を演じるにあたり、陶芸の猛特訓をされたそうですね。
やはり陶芸家ですから最低限、土に慣れてないといけないということで、撮影前に約3カ月、陶芸家の先生に教えていただいたんですが、難しかったです。土を練るという作業ひとつとってもいろんなやり方があって、指の力の入れ方ひとつで表情が変わるし、その時の体調や感情でも変わる。わずか3カ月ですが、実際に自分でやってみることで、その難しさと奥の深さを改めて感じました。
女優:戸田恵梨香

3カ月間、陶芸の猛特訓を受け、撮影に臨んだ ©NHK

今でこそ女性陶芸家はめずらしくありませんが、喜美子の時代には陶芸は男ばかりの世界でもあったんですよね。
陶芸は男の世界で女性は少ないという話をうかがって、なぜなんだろうと思っていたんですが、実際にやってみると陶芸って本当に体力仕事でもあって。先生が練られている土の固さだと私は力が足りなくて、まったく練れなかったんです。これは悔しいけど男の世界になるよな…と実感しましたし、女性が陶芸家としてやっていくことの壁の高さも改めて感じて。喜美子の勇気に驚きつつ、私も負けないでやらなきゃ! と決意を新たにしました。
女優:戸田恵梨香

好きなセリフは、「女にも、意地と誇りはあるんじゃあ!」という喜美子の言葉

〝朝ドラ〟では、これまでにもさまざまな形で「自身の手で道を切り開いてゆく女の生きざま」が描かれてきましたが、『スカーレット』はそういった観点からも共感を呼ぶものになりそうですね。
子どもの頃の喜美子のセリフで「女にも、意地と誇りはあるんじゃあ!」って言葉があるんですが、私はこれが本当に大好きで。(役柄で)20代になった今もたまに言ってるんですが、女性がものを言いにくかった時代にこういう言葉を屈託なく言える喜美子の無敵さがいいなあって。この時代にこういう女性がいたからこそ、今の私たちもこんなふうに働いていられるんだと実感できますし、彼女たちに対しての敬意を持ちながら私も喜美子として胸を張って生きていきたいなと思います。

実は『スカーレット』はチーフプロデューサーの内田ゆきさん、脚本の水橋文美江さん、音楽の冬野ユミさん、主題歌のSuperflyさんをはじめ、主要スタッフに女性が多いのです。なので「女の力でやってるぞ!」というのも感じながら見てもらえたらうれしいです。
戸田さんの登場は第2週の後半からとなりますが、15歳の女子高生を演じるという経験も〝朝ドラ〟ならではですよね。
10代の持ってるエネルギッシュな無敵さを31歳の体で表現しなきゃいけないって、すごいですよね。15歳の喜美子が「わーい」って言うシーンがあって、これはどうやって演じよう…と自問自答しちゃいましたが、意地でも「わーい」って言ってやる! と思って、実際やったんですけど、カットがかかった瞬間、息切れしました(笑)。

今は20代を演じてるんですが、体力的にずいぶんラクになって、同じ人物でも年齢によってやっぱり違うなって。これからまだまだ30代、40代の喜美子を演じていくわけですが、細かな変化はありつつ、喜美子の根っこにある明るさや意志の強さはブレないと思うので、そこは大事に演じていきたいです。
長く厳しいと言われる朝ドラの撮影ですが、現場の様子はいかがですか?
喜美子に出会いと別れがあるように、撮影のなかにも別れと出会いがあって、うれしくなったり、さびしくなったり。よく「朝ドラはキャストもスタッフも家族みたいになるよ」とは聞くんですが、本当にみんなで支え合っていて、膨大なセリフに追いつめられたときも、みなさんの顔を思い出しただけでがんばれる自分がいる。人の力ってすごいなあって日々感じながら撮影してます。
女優:戸田恵梨香

女性陶芸家の草分けとなるエネルギッシュな喜美子を演じる ©NHK

まさに朝ドラ・マジックですね。
101作目の朝ドラということで、チーフプロデューサーの内田さんは「朝ドラの原点を大切にしたい」とおっしゃってて。最近の〝朝ドラ〟は「ヒロインの女性が国民のみなさんに元気と力を与える」という基本テーマは踏襲しつつも、さわやかなイメージが強かったんですが、『スカーレット』はいい意味で泥臭い。その泥臭さを愛おしく思ってもらえるように、これから半年、喜美子として力強く生きていきたいです。
女優:戸田恵梨香

女性陶芸家の草分けとなるエネルギッシュな喜美子を演じる ©NHK

NHK連続テレビ小説『スカーレット』

放送:2019年9月30日(月)〜2020年3月28日(土)<全150回>

出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、大島優子、林遣都、佐藤隆太、財前直見、水野美紀、溝端淳平 ほか

URL:https://nhk.jp/scarlet