俳優：稲垣吾郎
演じる楽しさを教えてくれた〝朝ドラ〟。再び与えてもらった絆を大切に演じたい
ＮＨＫ連続テレビ小説『スカーレット』、物語はいよいよクライマックスに。新たな登場人物として注目を集めているのが、稲垣吾郎が演じる医師・大崎茂義だ。主人公・喜美子（戸田恵梨香）と息子の武志（伊藤健太郎）を精神的にも支えていく重要な役柄に挑む心境や撮影現場の様子などを語っていただきました。
いま旬なひとたち
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再び与えてもらった絆を大切に演じたい
「〝朝ドラ〟は他のドラマと比べると撮影スピードが速いので、慣れるまでがちょっと大変でした」
- 連続テレビ小説への出演は1989年の『青春家族』以来、約30年ぶりですね。
- 『青春家族』は、生まれて初めてお芝居をした忘れられない作品で、お芝居の道に進んで行きたいと思いました。演技について、共演のいしだあゆみさんと橋爪功さんにすごく褒めていただいて、それまで人に褒められた経験もなかったし、ひとりの俳優として認められた感じがしてうれしかった。いつかまた参加したいなという思いがあったので、今回の『スカーレット』の出演もすごく光栄なことだと思っています。
- 医師・大崎茂義は稲垣さんから見て、どんな人物ですか？
- 大崎は白衣を着たがらないという設定がある、ちょっと風変わりなお医者さん。脚本家の水橋文美江さんは、昔からお付き合いがある方なので、稲垣吾郎が演じるから僕のイメージで書いてくださったのかな。でも、白衣を着ていないと医者になった気分になれない。コスプレって大事ですよ（笑）。
「なぜ白衣を着ないのかと疑問だったけど、威圧感や緊張感を抱かせないためか！」とインタビュー中に気がつき、納得するというユニークな一面も
- 確かに、白衣姿の方が気持ちも引き締まる気がしますね。大崎は喜美子の精神的な支えになる人物ですが、稲垣さんが大変な状況になったときに支えてくれる人はいますか？
- 僕には、友や家族、一緒に仕事をしている仲間･･･と支えてくれる人がたくさんいる。意外と思われるかもしれないけれど、僕はすぐ相談して頼ってしまう、ひとりで抱え込まないタイプ。喜美子や武志は、人に迷惑をかけちゃいけないとふんばっているじゃないですか。僕なんか甘ったれなんで、すぐ誰かを頼るので逆ですね。
「なぜ白衣を着ないのかと疑問だったけど、威圧感や緊張感を抱かせないためか！」とインタビュー中に気がつき、納得するというユニークな一面も
- 喜美子と武志の親子関係をそばでみていると、ご自身のお母さまを思い出したりはしませんか？ 稲垣さんも、お母さまととても仲良しでいらっしゃるとか。
-
最近はなかなか行けてないけれど、2人でゴルフに行くくらい母とは仲が良いですね。同じ東京都内に住んでいるので、いつでも会えるという感じがあるけど、会う時間はきちんと作らないといけませんね。うちの母は、喜美子と比べると優しすぎます。父がしっかりしているというのもありますが、人当たりもよくて、ふわっとした柔らかい人。芯にあるものはきっと強いんだろうけど。
これからの『スカーレット』では、母という立場の人にとっては、感じるものが多々あると思います。制作統括の内田さんは、「病気と闘っていく武志と家族。そのなかで、どう生きるかをテーマにしたい」と僕に話してくれました。そのことを自分の心に置いて演じたい。戸田恵梨香さんも女優として素晴らしく、本当に喜美ちゃんそのもの！母の気持ちを細やかにちゃんと演じられるのはすごいです。
- 滋賀県の信楽が舞台の作品ですが、現地を訪れたり、信楽焼に触れたりされたことはありますか？
- 信楽には、まだ行けていないんです。でも、『スカーレット』を通じて、陶器に興味がわいてきました。もともとワインが好きだし、去年は「BISTRO J_O」というレストランのプロデュースをさせていただくなど、洋食器に触れる機会は多かったけど、信楽焼のような、土の柔らかい風合いの焼き物を自分の目の前に置きたいなと思うようになりましたね。実は昨日、ひとりで梅田のデパートに出かけて、信楽焼を見てきたんですよ。
ひとりで梅田を散歩するなんて！「マスクをしている人が多いし、帽子を被れば全然バレませんでした」
- 稲垣さんが梅田のデパートにいらしたんですか！？ ビックリです！
- 大阪には何度も来ていたけれど、イベントの時などは警備の問題もあったので、まともに大阪の街を歩いたことがなくて。NHKの楽屋からは大阪城が見えていたので、「近いかな」と思って歩いて行ってみたんです。その後、「梅田という地名は知っているぞ、行ってみよう」と1人でJR環状線の森ノ宮駅から大阪駅まで出て、デパートを散策。そこで見つけた信楽焼のマグカップを買おうかと思ったけれど、「衝動買いはよくない。家にある食器類を確認してからじゃないと、食器はかさばってしまうから！」と買わなかったんですけど。でも、実際に大阪の街を歩いてみるのは楽しかったし、いい経験になりました。
- 「新しい地図」として活動されるようになって、今までと大きく変わられた点などはありますか？メンバーの草彅剛さん、香取慎吾さんは今回の出演についてはどんな反応をされていましたか？
- 環境が変わって失ったものもあれば、得たものも大きい。SNSを始めて、ファンや視聴者の声をリアルに聞くことができるようになったのは、僕らにとっては大きな変化でした。実は、まだ何も言われていないんですよね。僕らは昔からお互いの仕事の内容なんかを、ネットや雑誌、インスタグラムの更新などで知ることが多くて。僕もある意味彼らのファンなので、ファンと同じタイミングで情報を知るのは面白いかなって思ったりしています。
ＮＨＫ連続テレビ小説『スカーレット』でのワンシーン
- 楽しみにされているファンの方にメッセージをお願いします。
- 長い間芸能界にいるので、いろんなことを経験してきましたが、僕は今の自分が一番幸せだし、応援してくださる方にもそう思ってもらいたい。30年前のまだ何もわからない少年のときにオーディションで選んでもらい、そして僕の環境が大きく変わり、リセットしたタイミングでまた〝朝ドラ〟に声をかけてもらった。この〝朝ドラ〟との絆みたいなものをこれからもずっと繋げていきたい。大崎という役を通して、僕のなかにある新しい地図をさらに広げていきたいですね。
ＮＨＫ連続テレビ小説『スカーレット』でのワンシーン
取材／西村円香 写真／木村正史