ダンケ

『ダンケ』の代名詞、バターブレンドコーヒー600円(アメ横ダンケは550円)。ケーゼクーヘン500円は、丸いパンの上にチーズをのせ、オーブンで焼いて生クリームを添えたメニュー。

日本のコーヒー文化発祥地
神戸で生まれた
唯一無二の一杯

幕末の1868(慶応3)年、世界に向けて開かれた神戸港。開港以来150余年の港町・神戸では、いち早く「ハイカラ文化」が花開き、ラムネやソース、ジャズ、ゴルフをはじめ、様々な日本初が生み出された。今や日本人にとって馴染み深い嗜好品、コーヒーもその一つ。明治初頭に、元町の茶舗で始まった豆の販売と飲料の提供が、日本におけるコーヒー文化の発祥だといわれている。
そんな神戸に、日本はもとより世界でも類を見ない唯一無二のコーヒーで、ファンの心をつかんで離さない名店がある。港町を見晴らす山手の閑静な住宅街、御影の地で44年にわたって続く『御影ダンケ』だ。店の看板であり客の目当ては、店主の寺口孝雄さんが淹れるバターブレンドコーヒー。

店舗

1.コーヒーカップは、高級洋食器の老舗、大倉陶園製のみ。これらは装飾品ではなく、すべて器として使われる。

焙煎直後のコーヒー豆にバターを染み込ませ、豊かな香味を引き出すブレンドは、若き日の寺口さんが4年の歳月をかけて生み出した独自の秘法。当時は、コーヒーの味を柔らかくするためにフレッシュや牛乳、砂糖を入れるのが一般的だった。しかし、それらを加えることでコーヒー本来の色や風味は損なわれてしまう。そんな課題を解決しようと、試行錯誤を重ねた末にたどり着いたのが、寺口流のバターブレンドだ。
丁寧に淹れられた一杯を口へ運ぶと、まろやかで上品なバターの風味、スパイスの香り、酸味、甘みなどが順を追って広がってゆく。他のどこでも感じたことのない、『ダンケ』だけの味わいである。バターと聞けば、いわゆるフレーバーコーヒーの類をイメージするが、それとは全く次元が異なる。むしろ、バターブレンドによって、コーヒー本来の味と香りがより一層引き立てられているのだ。
日本における発祥の地、神戸で生まれた唯一無二のコーヒー。その名店『ダンケ』の系譜は、暖簾分けという形でのみ、兵庫県内や大阪をはじめ首都圏にも受け継がれている。

店舗

1.コーヒーカップは、高級洋食器の老舗、大倉陶園製のみ。これらは装飾品ではなく、すべて器として使われる。

料理

2.アイスクリーム、バターブレンドコーヒーのゼリー、生クリームで3層に仕立てたコーヒーゼリー800円(アメ横ダンケは750円)。3.名店の味を楽しめるドリップバッグは、各界の著名人も愛用する人気の品。4.阪急御影駅の南側に立地する『御影ダンケ』。5.1杯の抽出に使う豆は、大きめの計量スプーン3杯分。

神戸/御影

昔も今も変わらない
バターブレンド一本勝負

オーセンティックバーを思わせる空間に、香ばしくもまろやかなバターブレンドコーヒーの香りが漂う、『ダンケ』の総本山。メニューには、看板のバターブレンドコーヒーを筆頭に、それをベースにしたウインナーコーヒー、コーヒーフロート、コーヒーゼリーと、ケーゼクーヘンの5種のみが記されている。40年以上変えられていないメニュー構成は、最小限のメニューで最大限の味とサービスを披露しようとする、店主・寺口さんの気概の表れだ。
店内にはテーブル席も設けられているが、カウンターに陣取るのが正解だろう。店主の寺口さんがコーヒーを淹れる定位置前が特等席だ。気さくで話し好きな店主とのコーヒー談義が楽しめるのはもちろん、神聖な儀式のような所作を、目の当たりにしてみてほしい。

御影ダンケ

両手でカップを包み込み、祈るように見つめる所作が印象的。コーヒーと客に誠意を尽くす、一途な思いが感じられる。

御影ダンケ

Address/兵庫県神戸市東灘区御影郡家2-19-16
Tel/078-843-6050
営業時間/12時~20時
定休日/月曜・第3火曜休(祝日の場合は営業)
Access/阪急神戸線「御影」駅から徒歩約1分
地図
御影ダンケ

両手でカップを包み込み、祈るように見つめる所作が印象的。コーヒーと客に誠意を尽くす、一途な思いが感じられる。

東京/上野

一番弟子が守り広める
名店の粋と流儀

昭和風情を色濃く残すアメ横の一角にある、暖簾分けの店。店の主は、バターブレンドコーヒーの生みの親である『御影ダンケ』の寺口さんを師と仰ぎ、自ら一番弟子を名乗る楠陽一朗さんだ。
楠さんは、神戸で学生時代を過ごしていた時に通っていた『御影ダンケ』でバターブレンドコーヒーの虜になり、就職した企業を退社してまで寺口さんの下へ入門。修業を経て独立後、暖簾分けの形で神奈川・本厚木に『ダンケ』の看板を掲げた。
以来、町田や吉祥寺などでも店を構え、2015年にアメ横へ移転。全6席の小さな店は、御影の本店と比べ規模こそ違うものの、本質では勝るとも劣らない。バターブレンド一本のメニュー構成や大倉陶園の器、コーヒーと客に真摯に向き合うスタンスなど、『ダンケ』の粋と流儀が継承された名店である。

アメ横ダンケ

楠さんの所作に象徴される、師から受け継いだ『ダンケ』イズム。それは、独立し東京で移転を重ねた今なお不変だ。

アメ横ダンケ

Address/東京都台東区上野4-1-8 長谷ビル1F
Tel/03-3837-2111
営業時間/12時~20時
定休日/無休
Access/JR山手線・京浜東北線「御徒町」駅から徒歩約2分
地図
アメ横ダンケ

楠さんの所作に象徴される、師から受け継いだ『ダンケ』イズム。それは、独立し東京で移転を重ねた今なお不変だ。