ポルトガル中部のアヴェイロ県にある小さな街・アゲダ。この街の夏の風物詩となりつつあるのが、街中をカラフルな傘が覆いつくすアンブレラ・スカイ・プロジェクトだ。毎年7月上旬~9月下旬にアゲダで行われる芸術祭・アゲダグエダの一部としてこのプロジェクトが始まったのは2012年。まだまだ歴史の浅い催しながら、今ではこの“傘アート”が芸術祭のメインイベントとなるほど、高い人気を誇っている。街の通りや商店街にかけられた色とりどりの傘は、場所によって色やデザインが異なり、お気に入りのポイントを探しながら街を歩くのが楽しい。
実はこのプロジェクト、単なるアート作品ではない。地中海性気候に属するポルトガルでは、夏の強すぎる日差しは観光客を遠のかせる悩みの種。そんな中、街おこしの一環として提案されたのがこの企画だ。無数の傘が頭上を覆うことによって通りに日陰をもたらし、訪れる人にゆっくりと街を散策してもらえる環境を作り出している。美しいだけでなく、街の活性化にも一役買っている傘アートを見に、夏のポルトガルを旅してみては。
アンブレラ・スカイ・プロジェクトが行われるアゲダの街があるのは、ポルトガル中部地方に位置するアヴェイロ県。県都であるアヴェイロは「ポルトガルのヴェネチア」と呼ばれる水郷都市で、観光地として高い人気を誇る一方、大西洋に面した土地柄もあり漁業が盛んな街でもある。
アヴェイロの魅力はなんといっても街の中心を流れる運河と、その運河を行き来するカラフルな小船・モリセイロだ。元々は海藻を集めて運搬するためのものだったが、観光用のゴンドラとして再利用されており、街のみどころを水路で巡ることができる。舳先に描かれる絵柄はどれもユニークで色鮮やかなものばかりで、カラフルな船体が水面に映り込み、美しい水辺の風景を作り出している。
そして、アヴェイロを訪れるなら必ず食べたいのが名物のウナギ料理。ウナギといっても15㎝ほどの小ぶりなもので、フリットや煮込み、マリネなど、日本ではなかなかお目にかかれない調理方法で提供されている。また、ポルトガルの国民的食材であるバカリャウ(干し鱈)を使った料理もおすすめ。バカリャウは365通りの調理方法があるといわれるほどポルトガルの食卓にかかせない食材で、どのレストランにもバカリャウ料理が数種類はある。そして食後のデザートには、この地方の郷土菓子であるオヴォシュ・モーレシュを。魚や貝の形をした薄皮の中に卵黄のあんがつまった漁港町らしいルックスのお菓子で、街中のカフェやパティスリーなどで手軽に買うことができる。
アヴェイロの街並みと名物グルメを楽しんだ後は、市街地を少し離れて郊外の街も訪ねたい。ストライプ柄の家が並ぶコスタ・ノヴァや、ポルトガル陶器で有名なイリャボなど、賑やかな色であふれたポルトガルらしい街並みが迎えてくれる。
ポルトガルで作られる陶器は、南欧らしい鮮やかな色使いと素朴な風合いのものが多く、普段使いできるテーブルウェアとして人気だ。アヴェイロ近郊の街・イリャボには、ポルトガル有数の陶器メーカー「ヴィスタアレグレ」の工房があり、高品質の陶器をアウトレット価格で購入できる。
大きな漁港をもつアヴェイロは、新鮮な魚介類の宝庫。アヴェイロ名物のウナギ料理や、ポルトガル人のソウルフード・バカリャウ(干し鱈)を使ったもの、缶詰めなどの加工食品まで、様々な魚介料理が味わえる。
大きな漁港をもつアヴェイロは、新鮮な魚介類の宝庫。アヴェイロ名物のウナギ料理や、ポルトガル人のソウルフード・バカリャウ(干し鱈)を使ったもの、缶詰めなどの加工食品まで、様々な魚介料理が味わえる。
カステラや金平糖、エッグタルトなど、ポルトガルから日本に伝わったお菓子は多いが、アヴェイロで見つけたのはまるで最中のような見た目のオヴォシュ・モーレシュ。500年以上前からこの街で作られている、素朴な味わいの郷土菓子だ。
アヴェイロ中心地からバスで30分程のコスタ・ノヴァはストライプの家が立ち並ぶ漁師町。漁に出た漁師たちが海上に霧がかかっていても自分の家を見つけられるようにカラフルに塗ったのが始まりだそうで、なかには100年以上前に建てられた歴史あるものも。