ノルウェー王国・ホルダラン県　トロルの舌 | 旅する旬間

断崖絶壁の〝妖精の舌〟で
度胸試し

ノルウェー王国（通称：ノルウェー）の南西部、ハダンゲルフィヨルドにある「トロルの舌」。断崖絶壁に飛び出た岩盤が、北欧神話に登場する妖精・トロルの舌のようにみえることから名づけられたこの場所は、海抜1100m、眼下の湖からは700mの高さに位置し、崖には柵などは設けられていない。岩盤の上に立ち撮影されたスリリングな写真が話題となり、世界中から登山家たちが訪れる絶景ポイントとなった。シーズン時には、撮影の順番を待つ人が行列をなすほどの人気だ。
トロルの舌へは、最寄りの街、オッダからバスで山の麓まで行き、そこからの交通手段は登山のみ。登山道は往復で27.5㎞、10～12時間かかる上級者向けコースだ。充分な登山経験がない人は、ガイド付きのツアーに参加を。登山時期の規制などはないが、ハイキングに適した時期は6月中旬から9月中旬まで。冬期の登山は雪が積もり危険なためおすすめできない。トロルの舌は、険しく長い登山道を越えた先にやっと見られる、とっておきの風景なのだ。

夕暮れどきの海岸沿いは、ブリッゲン地区の明かりが水面に写り込み幻想的。

ハンザ同盟で栄えた
ノルウェー最大の
湾港都市

ノルウェー第二の都市、ベルゲンは、フィヨルド地方特有の入り組んだ海岸沿いに築かれた美しい港町だ。トロルの舌へは、この街からホルダラン県にあるオッダにバスで移動するのが基本のルート。世界文化遺産に登録されているブリッゲン地区など見どころも多いので、トロルの舌へ訪れる前後に立ち寄りたい。

街の歴史は古く、1070年に拓かれた後、12～13世紀まではノルウェーの首都として機能していた。その後14～15世紀にはバルト海沿岸地域の商業発展を目的としたハンザ同盟に加盟。ハンザ商人達はベルゲンの名産品である干し鱈の輸出により富を築き、ハンザ同盟が終結するまで約400年にわたり栄華を誇った。そのハンザ商人たちが事務所兼住居として利用していた建物のあったエリアが世界遺産になっているブリッゲン地区だ。港に面して建つ木造家屋が、当時の雰囲気のまま保存されている。現在はレストランや土産物店、工房などに利用され、多くの観光客で賑わいをみせる。ハンザ同盟解体後のベルゲンでは、漁業以外にも造船や手工芸品の分野も発展し、いまではノルウェー最大の港湾都市となっている。

三角屋根のカラフルな木造家屋が建ち並ぶブリッゲン地区。

近年はトロルの舌への玄関口として訪れる人も多いが、ベルゲンは長年フィヨルド観光の拠点として賑わってきた。ベルゲンを含むノルウェーの西武海岸線はフィヨルド地方と呼ばれ、氷河の浸食によって形成された海岸線が続く。複雑に入り組んだ海岸と美しい自然の景観はノルウェー観光の目玉となっている。ベルゲンからは5大フィヨルドの一つ、ソグネフィヨルドがアクセスしやすく、列車やバス、フェリーなど様々なルートで訪れられる。ベルゲンを拠点に、トロルの舌や5大フィヨルドを訪れ、ノルウェーのダイナミックな自然美を感じたい。