リベルターブル赤坂店の
口に入れた瞬間、何かが弾け、あふれ出すようにバラの香りが迫ってくる。
バラを使ったケーキはいまどき珍しくないが、焼き菓子でここまで前面にくるものがあるだろうか。
焼き上がった生地にバラのリキュールをたっぷりしみこませ、さらに表面のグラサージュ(砂糖衣)にもリキュールを。ケーキの外側に重ねることで、食べた瞬間にしっかりと香りが立ちのぼる設計になっている。
オーナーシェフの森田一頼さんはフランスで修業後、有名レストランでシェフパティシエを担当。その後、フルコースを楽しめるフレンチレストランを開き、その独創的な感性や素材づかいでたちまち人気店に。
「レストランでの経験を生かして、パティシエの視点だけではできないものを、という意識はあります。お菓子を、お店で食べるひと皿のデザートに近づけたいというか。香りや食感のやわらかさ、みずみずしさは大切にしています」
開店と同時にひっきりなしのお客の3〜4割が男性客で、
外せない勝負手みやげとして信頼を得ているようだ。
村上開新堂の
明治40年創業という京都最古の洋菓子店。昭和初期に建てられた洋風建築の扉を開けると、大理石の柱やカーブを描くショーウィンドーなど和と洋が混ざり合ったクラシカルな内装が、買い物の高揚感を一層高めてくれる。
池波正太郎が愛したことでも知られる紀州みかんのゼリー・好事福廬(こうずぶくろ・11〜3月限定)は、大正時代から続く店の看板メニュー。暑い季節には、こちらも昔ながらの製法で作るオレンジゼリーをぜひ。
果実1個まるごとを器に、オレンジそのままのおいしさを閉じこめたゼリーはフルフルとやわらかな食感で、年輩の方への手みやげにもぴったり。ふたの果汁をギュッと搾れば、よりみずみずしく味わえる。
2017年には店内奥の住居スペースをリノベーションしてカフェを併設。新しい挑戦は、愛されてきたものを次につなげるため。京都の老舗はこうして新陳代謝をしながら続いていくのだ。
ゼー六の
オフィスビルが並ぶ本町にあって、そこだけ時間が止まったかのような佇まい。
名物のアイスモナカは、昭和初期にはまだ珍しかった自家製アイスクリームを、モナカ生地で挟むという元和菓子屋ならではの発想が生んだ、
ハイカラなおやつだ。冷凍庫のない時代、塩と氷を使って冷やしていたという。
当時から変わらず、牛乳、砂糖、卵というシンプルな材料でつくる、清々しい甘み、混じりっけのないおいしさは、白いモナカに白いアイスを挟んだ清楚な姿に表れている。
アイスをモナカに詰めるのは、注文を聞いてから。持ち帰りは風味を損なわないようドライアイスを使わず、新聞紙で。
一見、無造作なようで、実は持ち歩く時間に合わせて新聞紙の枚数を変えている。出来たてをひとつ自分用に買って頬張りつつ、次々に包んでいく職人技を見るのも、足を運んだお楽しみ。
ざっくり新聞紙ごと手渡す素朴さも、気のおけない間柄ならまた“味”だ。
施記(シーキ)の
扉を開けると最初に目に飛び込んでくる、ぶら〜んと吊り下げられた肉の塊。吊り叉焼は神戸では珍しくない光景だが、美しい焼き色や照り感といい、漂うオーラが桁違いだ。
これらは美食の街・香港発の釜焼き料理。同ビル4階に海鮮レストラン[施家菜(シーカサイ)]を構え、現在進行形の香港の食事情に精通するオーナー・施蓮宗さんの念願だったものだ。
「神戸でも本格的な窯焼きを提供する店はない。炒、点心、そしてこの窯焼きが揃ってようやく真の香港料理といえます」。
2016年の開店を機に、これまではスペースの都合で断念していた壺状の専用窯を香港から取り寄せ、あわせて専門の焼蝋(しゅうろ)師も広東省から召還した。
内側に食材を吊るし、余分な脂を落としながら火入れすることで、みずみずしさと驚異的な旨みを実現。
オーブン調理とは似て非なる味を知るには、ひと口あれば充分。新年会や結婚パーティーなどお祝いの席で、宴を大いに盛り上げてくれることうけあいだ。